平成アニメ話 初めての絵コンテ『桃太郎伝説』
初演出で失敗し落ち込み立ち直ることもなく、一年後には退社して、元の撮影に戻った。
一度は演出から逃げたのだ。
31歳くらいのことである。
それでも演出への未練は絶ち難く、撮影を続けながら そのチャンスを虎視眈々と狙っていた。
自分は今回の失敗の原因を『他人の書いたコンテで演出したことによる』と判断していた。
自分の書いたコンテならもう少しなんとかなったのではないかと。
※この考えは間違えている。コンテにある要点を読み解けない実力不足と、映像を仕上げてゆくための手練手管がない経験不足がほとんどの原因といってよい。
さらに言えば原因を自分ではなく人のせいにしている。
まあ、若さ故の過ちと言うか、そうでもしていなければ精神のバランスがとれなかったのだろう。
演出を始めたころは他人の書いた絵コンテで演出することになる。
そこをそつなくこなしていれば、いずれ自分で絵コンテを書きそれを自分で演出することができる。
ここも前に書いたことがあるが「最初の一歩」が大変なのだ。
制作は絵コンテを書いたことのない演出に絵コンテを書かせてくれないのだ。
でもどこかで絵コンテを描かない限り次はない。
そしていつかは自分の絵コンテで演出しなければ将来はないと思い込んでいた。
そのチャンスを虎視眈々と狙っていたところ、後輩の制作が声をかけてくれた。
「絵コンテと演出込みの仕事があるけど興味あります?」
「ある」
「じゃあ、先方に連絡しても良いですか?」
「たのむ」
先方からは絵コンテの経験は一言も聞かれなかった。
また、こちらからわざわざ未経験であると白状するつもりもなかった。
聞かなかった向こうが悪いのだ。
というわけで絵コンテデビューとなったのが『桃太郎伝説』だった。
『桃太郎伝説』(ももたろうでんせつ)は、ハドソンから発売されたRPG『桃太郎伝説』を原作としたテレビアニメ。
テレビ東京系列で1989年10月2日から1990年10月1日まで全51話が放送された。
この作品で本格的に演出に復帰したのだった。
まあ、あとで大変な目にあったのだけどね。