嗚呼、演出デビュー散々記
19歳でアニメ演出を志し21歳で上京し、23歳で撮影助手として業界に入った。
27歳で演出助手に転職し、念願の演出になったのはもうすぐ30になろうとする年齢だった。
前にも書いたが自分は演助としてはできる方だったと思う。
そして同期の中では最初に演出に抜擢された。
志望して10年は長かったけど、演出になった時は天にも昇る心持ちだったな。
でもそんなウキウキ気分は演出デビュー作で粉砕されてしまったのだ。
原因は勉強不足と増長である。いわゆる若さゆえの過ちだ。
できる演助とできる演出は違うのだ。
打ち合わせから原画のチェックと進んでゆくうちに実力の無さや決断力不足から混乱し、自分がどうして良いのかわからない状態に陥ってしまった。
当然できた映像の出来は悲惨であった。
ラッシュ後に所属していた会社の社長や先輩とともに元請けの会社に呼び出され、
「今後、こういう作品を作らないために話し合おうと思います」
という会議が開かれたのだった。
もう針のむしろである。
死にたくなるような2時間だった。
すぐには立ち直ることができず1年後には演出をやめて撮影に戻った。
ここから立ち直るにはさらに1年以上かかることになる。
このあたりの出来事は今思い出しても胃に砂が詰まったような感覚になる。
よくここで業界を辞めなかったものだ。